睡眠と免疫のメカニズム
こんにちは、やま茶です。
前回は睡眠をしっかりとることが肺炎リスクを下げるという論文を紹介しました。
こちらではさらにどうして睡眠が免疫に良いのか、というところを書いていきたいと思います。
睡眠がどのように免疫に影響を与えているのか
これはまだ完全に明確になっているわけではありません。
それに加え、とても複雑に要因が絡み合っているので、わかっている範囲でできるだけわかりやすく説明しますね。
キーワードは、炎症とホメオスタシスにあります。
炎症というのは、わかりやすいところでは組織の炎症でしょうか。
なんらかの理由で組織が障害されると炎症が起こります。
炎症が生じるというのは、炎症のサイトカイン(化学物質)が発生するということです。
炎症のサイトカインを介して、以下の図のように、炎症が発生すると、睡眠や免疫、中枢へと影響が及びます。
※ 相互の矢印は、炎症のサイトカインによって神経伝達が行われ、影響を及ぼしあっていることを示しています
一般的に、感染症や外傷は、炎症が起きているのは自覚できるのでわかりやすいですが、
急性の炎症とは別に、2型糖尿病・肥満・心疾患・がん等といった特定の病気では、慢性の炎症が生じています。
この慢性の炎症は、ホメオスタシスへ影響しホメオスタシスの組織修復機能等を低下させます。
ホメオスタシスとは、生体の恒常性を保つ機能で、通常の状態(健康)を維持するために常に私たちの身体の中で機能しています。
ホメオスタシスの機能は、睡眠や組織修復、免疫など多岐に渡って影響しています。
また、サーカディアンリズムも私たちの身体に存在し、太陽の光でリセットされ、約24時間の周期で動いています。こちらも、睡眠を含むあらゆる身体の機能に影響しています。
ここで、上図の説明も兼ねて一度まとめますと、
・睡眠は、ホメオスタシス(non-REM睡眠:深い睡眠)とサーカディアンリズム(REM睡眠:浅い睡眠)によって調整されている
・睡眠だけでなく、中枢や免疫もホメオスタシスやサーカディアンリズムの影響を受けている
・慢性の炎症は、中枢や免疫、睡眠のホメオスタシスへ影響し、その機能を妨げる
さらに、新しい情報を追加します。
・慢性の睡眠不足は炎症のトリガーである
・糖尿病や心疾患・ガン・ストレスは、炎症へと繋がり、睡眠へ影響する
ここまでご理解いただけたでしょうか?
睡眠と炎症は、お互いに影響しあっているということですね。
ここで重要なのが、慢性の炎症がホメオスタシスの機能を妨げるということです。
一過性の炎症は、ホメオスタシスに影響はしますが、炎症が落ち着くとまた正常にホメオスタシスは働きます。
つまり、普段の私たちの生活習慣がキーポイントとなってくるわけです。
そして、さらにわかっていることは、
・炎症は、免疫細胞の機能を障害し免疫を下げる
・炎症は、加齢(組織の老化)を促進する
つまり、炎症は免疫を下げますし、組織修復も妨げますので加齢を促進してしまうということです。
何度も繰り返しますが、睡眠と炎症は影響しあっていますし、炎症はまた睡眠以外の他の機能にも影響を及ぼしているということです。
また、他の器官で生じた炎症が、睡眠の質を下げるという逆の現象も起こります。
ここまでで、慢性の睡眠不足 → 炎症 → 免疫低下 の流れはご理解頂けたかなと思います。
では、ここで大事になってくるのは、生活習慣を正し、できるだけ炎症を起こさないこと、ではないでしょうか?
睡眠に関しては、質の良い睡眠を毎日とるという習慣が炎症を発生させないことに繋がります。
平日の起床時間と休日の起床時間が2時間以上ずれることがあれば、慢性の睡眠不足の可能性があります。
該当される方は、平日の就寝時間を30分早めてみてはいかがでしょうか?
すでに風邪をひいてしまった方も間に合います。
睡眠中に抗体が作られるので、風邪をひいてしまったらしっかり眠るのが早く治す方法です。
ワクチン接種後は十分な睡眠をとることが論文(参考文献参照)でも推奨されています。
逆に睡眠が足りないと免疫が不十分でワクチンの効果も落ちます。
十分な睡眠は感染症の予後を改善するというエビデンスもありますので、睡眠に対する意識が少しでも変わっていただけると嬉しいです。
次回は、質の良い睡眠をとるための具体策を書いてみたいと思います。
以下、参考文献